幻の木「カヤ」

カヤ(榧:Torreya nucifera)はイチイ科カヤ属の常緑針葉樹で、日本特有の樹木のひとつです。国内では東北以南、屋久島までの山林に分布しています。

濃い緑色の葉は固く、細長い剣のような形で、枝から突き立つように並び生えます。また、イチョウと同様に雄株と雌株に分かれており、雌株は秋にオリーブに似た大きな実をつけます。

幹はまっすぐに伸び、大きいものでは20〜25mほどの高さになりますが、成長が極端に遅く、生育には大変な時間がかかります。榧の柾目材は、囲碁・将棋の盤の材料として最高級とされていますが、大きな部材がとれる幹に成長するまでには300年以上の年月が必要なため、市場にはほとんど流通していないようです。

そのため、カヤは「幻の木」とも呼ばれています。

日本古来のナッツ

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カヤの実は果実ではなく、種実(ナッツ)に分類されます。

果肉に似た緑の外種皮を取り除くと現れる、固い殻に覆われた種子は、アク抜きを行い乾燥させることで食用となります。他のナッツの中では比較的アーモンドに近い味と食感ですが、噛むほどに豊富な油分とカヤ独特の香りが口の中に広がります。

縄文時代の各地の遺跡からクルミやクリ、ドングリといった木の実とともに、カヤの実も出土していることから、日本では古来より食物とされていたことが分かっています。多種の脂肪酸をはじめとする栄養素を豊富に含んだカヤの実は、狩猟採集の時代から大切な食料のひとつでした。

また、油脂を抽出した榧油は、燈明の油や頭髪油としても重宝されました。

生薬として

漢方の世界では、榧の実の外種皮を取り除き天日乾燥させたものを榧子(ひし)と呼び、生薬として主に十二指腸虫(条虫)の駆除に用いられてきました。元来の榧子はシナガヤという植物の種子で、日本のカヤとは同属異種ですが、日本には生育しないこともあり、カヤの実にて代用可能とされ、利用されてきました。

お供え物として

カヤは古くから神様への供え物、または縁起物として扱われてきました。大相撲では場所前に土俵祭りという儀式が行われ、はじめに相撲の三神への供物として、勝栗、こんぶ、米、するめ、塩、そしてカヤの実が土俵の中に封じられます。著名な石清水八幡宮や金刀比羅宮をはじめ、神饌にカヤの実が含まれる神社がいくつもあります。

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